平成14年度活動実績

平成14年度における会の主な活動、新聞等に掲載された関連情報

平成15年3月9日 第2回家族交流会が開催されました

3月9日(日)の10:30~16:00、東京都府中勤労会館にて、第2回家族交流会&弁護士無料相談会が、大勢の方々がご参加下さいまして、大変な盛り上がりの基に開催されました。北は北海道や宮城県、南は京都や愛知県などから、当事者家族参加者は72名(47家族)でした。 他団体からは、ジャーナリストの柳原三佳さん、木の芽会より1名、jiko110番より5名、の計7名。 弁護士さん達は、東京・千葉・大阪などから9名も馳せ参じて下さいまして、無料法律相談に応じて下さいました。総勢90名程が、法律相談と平行して、昼食もはさみながら、皆様の自己紹介からは真摯な切実なお話を伺い、また、代表や、ご参加下さいました他団体の方々、弁護士の先生がたからは貴重なお話を伺うことが出来ました。 後、懇親会に移り、弁護士の先生がたと共に参加者全員が和気あいあい、賑やかに盛り上がりました。 日頃の苦労を癒し慰めあい、また励まし合い、大変に有意義な一日であったのでは、と思いました。

平成15年2月27日 会員の事件が国会で取り上げられました

当会の会員の事件が、井上和雄議員(交通事故問題を考える国会議員の会事務局長)により、国会で取り上げられました。これまでも、知事に陳情するなどの活動を、当会で支援して参りましたが、国会で個々の事件について取り上げてもらえたのは被害者およびその家族にとって大きな前進だと思います。悪質な加害者にも関わらず、加害者の一方的な証言を取り上げるなどで、苦しんでいる被害者の気持ちを代弁してくださいました。

平成14年7月10日各社新聞記事
交通事故での高次脳機能障害が認められた判決が出ました。

交通事故男性の高次脳機能障害を認定
加害者に損害賠償命令 岡山地裁倉敷支部/岡山
交通事故で深刻な記憶障害や人格変化などの高次脳機能障害になったとして倉敷市内の男性(20)と両親が、加害者の市内の女性(26)に約1億1000万円の損害賠償を求めた裁判で、岡山地裁倉敷支部(中川博文裁判官)は10日までに、「高次脳機能障害で安定的な就労が困難になった」として、約7200万円の支払いを命じる判決を出した。訴訟で同障害が認定されるのは珍しいという。

判決によると、男性は中学生時代の97年5月、市内の市道交差点を自転車で走行中、女性の乗用車にはねられ頭などを強打、一時、意識不明になった。身体的後遺症のほか、興奮しやすく暴力的になったり、知能と記憶力の低下、近時記憶障害、集中力低下などの高次脳機能障害が残った。
被告側は「身体的症状が比較的軽微で、自動車保険料算定会が認定した後遺障害等級5級が賠償の算定基準」と主張。判決は「円滑な対人関係維持能力に著しい障害があり、社会生活適応に多大な支障があるうえ、回復の可能性は大変低い」として「3級が相当」と認定した。 【小林一彦】(毎日新聞)[7月11日20時23分更新]

事故で高次脳機能障害に地裁が7200万賠償命令
交通事故で脳に外傷を受け、記憶障害などの「高次脳機能障害」を負ったとして、岡山県倉敷市内の男性(20)と両親が、市内の女性(26)に約1億2000万円の損害賠償を求めた訴訟で、岡山地裁倉敷支部(中川博文裁判官)は10日までに、高次脳機能障害で働くことが困難になったことを認定、女性に7200万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

民事訴訟でこの症状が認められるのは珍しい。判決によると、男性は1997年5月6日、倉敷市内の市道を自転車で横断中、女性運転の乗用車にはねられ、頭などを打って約2週間意識不明となった。約3か月後に退院したが、知能や記憶力の低下など高次脳機能障害を負い、情緒不安定になるなど精神的機能にも障害が残った。

「症状が回復する可能性は低く、行動範囲などが制限され、独立した社会生活は困難」と認定された。
(読売新聞) [7月10日18時5分更新]

平成14年5月29日 各社新聞記事 「高次脳機能障害」が裁判で初めて認められました。

日経新聞記事
高次脳機能障害を初認定・大阪地裁
暴行され、記憶障害など重い後遺症が残る「高次脳機能障害」を負ったとして、大阪府池田市の無職今井浩弥さん(38)が、加害者の元被告男性(39)=傷害罪で執行猶予付き有罪確定=に損害賠償を求めた訴訟の判決が28日、大阪地裁であった。山下寛裁判長は「原告は高次脳機能障害を負い、仕事ができなくなった」として、請求通り元被告に4000万円の支払いを命じた。今井さんの代理人によると、民事訴訟で高次脳機能障害が認定されたのは初めてという。
同障害は、交通事故などによる脳の外傷が原因の後遺症。患者は、外見は健康な人と変わらないが、記憶力や集中力が散漫になり、労働に著しい支障をきたすとされる。最近注目されるようになったが、診断基準もまだ確定しておらず、訴訟になったケースもわずかという。〔共同〕

毎日新聞記事/高次脳機能障害を認め、賠償命じる 大阪地裁

大阪府池田市の元アルバイト男性(38)が、シャッターに頭を打ち付けられるなどした結果、脳に障害が残ったとして損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は28日、原告側が主張していた「高次脳機能障害」を認め、加害者の男性(39)に4000万円の賠償を命じる判決を言い渡した。

同障害は事故や病気で脳神経のつながりが切れた結果起こるとされるが、外見からは判断が難しい。患者団体などによると、同障害で損害が認められた判決は初めてという。

判決によると、被害男性は97年11月、兵庫県西宮市内の路上で通りがかりの男性から暴行を受け、脳出血や頭の骨を折るなどの大けがを負った。その後、記憶力、注意力が大きく低下し、食事の際に自分の置いたスプーンの位置を忘れるなど生活に支障が出た。被害男性側は、意識は正常だが、注意力や持続力がないため仕事につくこともできない――と主張。

これに対し、加害者側は「高次脳機能障害は脳神経外科学会で認知されておらず、賠償の根拠とならない」と反論していた。

判決で山下寛裁判長は「暴行により高次脳機能障害と称される障害を負った」としたうえで、「原告の症状の下では現代社会での稼働が可能とはいえず、労働能力を100%喪失した」と認定、賠償を命じた。

この事件をめぐっては、加害者の男性が傷害罪に問われ、既に執行猶予付きの有罪判決が確定している。患者団体「頭部外傷や病気による後遺症を持つ若者と家族の会」(桑山雄次会長)の大久保康子さんは「高次脳機能障害は『隠れた障害』で苦労が多い。裁判で認められた意義は大きい」と話した。 【野原靖】

名古屋市総合リハビリテーションセンター臨床心理士の阿部順子さんの話
交通事故の場合は昨年から自賠責保険に高次脳機能障害の認定基準が新設されたが、暴行被害で損害賠償が認められたのは意義深い。患者団体では身体障害として法的に認めてほしいと国に要請しており、判決で症状に対する理解がさらに深まればと思う。読売新聞記事にて

●高次脳機能障害
脳神経のつながりが絶たれるなどして、記憶力や注意力が低下したり、感情がコントロールできなくなったりする脳障害。病気や交通事故などの外傷で脳が複雑なダメージを受けた結果、起こるとされる。従来救命が難しかった症例でも医学の進歩で意識回復できるようになったために、生まれた「新しい障害」とされる。傷害者数も把握されていない。

平成14年3月12日 「週刊朝日」の特集記事について

3月12日発売の「週刊朝日」3/22号から3回シリーズで、「もう泣き寝入りはしない-交通事故・重度障害者たちの闘い」がジャーナリストの柳原三佳氏によって連載されました。第1回目は、「16年目の春、梅の木の下で」と題し、当会の北原代表のご長男、洋さんの事件を取り上げました。後の裁判基準にもなる判決を取るまでの闘いと苦悩が心に迫ってきました。

「犯罪による損害は福祉に頼るのではなく、加害者が賠償すべきものであり、被害者の家族が介護だけに一生を縛りつけられるのではなく、自分の人生も自分らしく生きていけるよう主張してほしい。私はそのためにも支援活動に力を入れていきたい(福祉による救済を考えるに先立って加害者に全ての損害賠償をさせるべきで、その後に誰でも権利がある福祉救済を考えればよいと思います。過失が五分五分の被害者や過失が7割もある被害者賠償だけでは足りないから、福祉による救済を当てにするほか無いという厳しい現実もあります)。」という北原代表のコメントは、当会の理念と目標を要約したものでもあったと思います。

第2回目は、「もの言えぬ被害者への理不尽」として、被害者が重症を負い、事故前後のことを覚えていないことをいいことに、加害者が自分に都合のよい供述をし、警察もそれを鵜呑みにしてしまったために、被害者側に重過失があるとされてしまった事件を取り上げました。事故の真実が認められるには、事故から実に7年の歳月を要したそうです。やっと被害を回復することができたこの方は、「被害者自身が事故に対し、十分な知識をもつこと、警察がしっかりと捜査をすることが肝要」と述べていらっしゃいました。

第3回目は、「人間らしい「生」を取り戻すために」として、高次脳機能障害の問題がクローズアップされました。現在、高次脳機能障害に悩む被害者にインタビューし、社会的な認知の低さにより、障害の程度が軽くみられたりして、被害者本人も、家族も苦しんでいる現状がレポートされていました。

今年4月から、自動車損害賠償保障法(自賠法)が改正され、高次脳機能障害など「要介護」に該当する被害者への保険金支払い限度額が引き上げられましたが、それを実現させたのは、被害者が声を上げたからであることが報告されています(その活動の中心として、北原代表は、「全国交通事故後遺障害者連合会」を結成しました)。当会の活動についても触れられています。