交通事故刑事裁判の実態

交通事故の場合、ほとんどの場合加害者と被害者が存在します。 交通事故による不法行為があった場合、加害者には3つの責任が存在します。
1、刑事責任(刑罰等)
2、民事責任(損害賠償請求等)
3、行政責任(罰金等、免許停止等) 以上の3つです。
社会上の責任(道義的責任)も存在しますが法的なものではありませんし、加害者の言い分や態度は時とともに都合よく変わっていきますので過度に期待するより上記3つの解決に集中すべきではと考えます。 刑事責任と民事責任は平行して処理されることは不可能で、加害者の刑が確定してからでないと、損害賠償請求ができる民事裁判を起訴できません。

では刑事裁判では、加害者の刑量は、どのように算定され、その結果として、被害者が納得できる内容の判決を期待できるのでしょうか? 答えは悲しいかな「No!」です。人身事故で業務上過失傷害罪に問われるほとんどが略式起訴です。ですから、被害者にとって決して納得の行く判決とはいえません。その大きな理由は被害者本人不存在の捜査にも原因はあります。

交通事故が起こると、まず警察の初動捜査があります。

いわゆる現場検証というものです。その際、事故の当事者の事情聴取内容は、今後の刑事裁判や民事裁判にとって非常に重要なものとなります。当然被害者側、加害者側の両方から事情を聴取して、その内容が記録されていきます。しかし、加害者はともかく、事故により意識不明になったり、高次脳機能障害になってしまった被害者は事情聴取されても、事故の瞬間を的確に説明するなど到底できません。

ではこのとき警察はどのような行動に出るかと申しますと、多くの場合、加害者側の一方的な事情聴取だけで終わってしまうことがほとんどです。 そして多くの加害者は、保身のため、またはできる限り自分が不利にならないよう事情説明する場合がほとんどです。

制限時速60キロの道路を80キロで運転していても、事情聴取では「60キロぐらいで運転していた」と説明するでしょうし、前もって前方の被害者が確認できていたのに、「急に飛び出してきた」と説明する加害者は後を絶ちません。 警察も被害者に説明できる能力はないという容態は理解できているので、加害者有利の事情聴取を採用することになります。

加害者有利の事情聴取を避けるために

ここで大事なのは被害者家族の協力です。まずは、とにかく事故にかかわる証拠をできる限り保全することが大事です。
理想的なのは現場検証の時点で、被害者側のきちんとした弁護士が同席していることがのぞましいのですがこの時点でよい弁護士を確保するのは一般の人には情報がありませんので難しいことです。まず被害者家族自ら目撃者の確保をしたり、現場の写真を取り、事故当時の被害者本人の足取りを刻銘に記録し、被害者車両、加害者車両ともあらゆる角度から写真撮影をしたり、ブレーキ痕を撮影したりして、どんな些細なものでも記録に残す必要があります。

しかし、事故当初は家族の方もパニック状態でしょうから、なかなか上記のような行動は取れないのが現実です。しかし、いまさらといってあきらめるのではなく、最愛の家族のためにできる限り手を尽くしてこそ、悔いの残らない訴訟への第一歩となることは間違いありません。

被害者側が行動しなければ、だれも助けてはくれません。それが今の日本の現実です。

刑事裁判での判決の実態

昨今の新聞紙上等でお気づきの方も多いと思いますが、交通事故による刑事罰は大きく変わろうとしています。これは陪審員制度の導入の布石とも考えられますが、通り一辺倒だった、刑事判決内容に、変化が見られてきました。危険運転致死傷罪という言葉もそのひとつです。今までの業務上過失傷害(致死)の刑罰ではあまりにも不条理すぎました。

今までこの不条理さに苛まれてきた被害者の方々のことを思うと当然のことです。今まで泣いてきた被害者の活動の上に少しずつですが変わってきました。それでもすぐに今後飛躍的に判決の内容が被害者にとって納得のいくものになるともいえませんが、さらなる改善に期待はしたいものです。

とにかく、この刑事裁判での結果も、最初に述べましたように、事情聴取に参加できない被害者を阻害して、加害者側有利になりがちです。特に重傷者を抱えた家族は救命や命が助かったあとの介護に追われて後手に回りがちですし社会に対しての働きかけをする余裕も欠いています。

残念ながら遺族になられた方々の場合のほうがはるかに社会に対する働きかけをする機会もある場合が多く、かろうじて命だけは助かった重傷者の場合は社会の影で目立たない存在となりがちです。
パニック状態であることは十分に承知しておりますが、当会にはそういった修羅場をくぐってきた家族の方たちが多数在籍しております。一人だけで悩みこまず、そういった修羅場を潜り抜けてきた方々のアドバイスは、何よりの励みになり、そして知恵となって活かしていくことができます。当会ではそういった被害者の家族の方々には十分な門戸を開いておると自負しております。

交通事故の起訴率

交通事故の起訴率はどれくらいかご存知でしょうか? なんと全体の10数%だそうです。
交通事故に携わる現場の人間から言わせると、「起訴できただけでも良かったね」という言葉が聞こえてくるぐらいです。そのくらい、交通事故の起訴率は低いものです。家族が交通事故で重度の後遺症を負いひどい目にあっているのに不起訴だったという話は珍しいことではありません。

その上裁判となっても実際の判決では、罰金刑や執行猶予付き禁固刑がほとんどとなり、実は加害者は判決と同時に普通の社会生活を再開できるケースがほとんどです。また、加害者は刑事裁判中、見舞い謝罪を熱心にします。一生をかけて償うなどという事を言います。

しかし、判決後は無しのつぶてというケースが後を絶ちません。加害者には偽証罪もなければ、保護観察のような監査もありません。これが現実なのです。 ですから、被害者の家族の皆様には、加害者の不法行為には厳しい態度で挑んでいただき、決して諦めない強い意志の元、後悔しない訴訟を戦うためにも、当会の存在を十分にご理解いただき、ぜひ活用下さい。