交通事故の後見人・親なき後・介護なき後

後見人

高次脳機能障害や遷延性意識障害の被害者は、自分で自分の意志を的確に相手に伝えることが出来ません。ですから、悪意のある訪問販売にだまされたり、せっかく勝ち取った損害賠償金を騙し取られたり、または知らず知らずのうちに浪費してしまったりします。

少し難しい話になりますが、日本の民法ではこういった被害者を制限行為能力者として保護しております。制限行為能力者が行なった一定の行為は「取り消せる」ことができるのが原則です。取り消せることが出来る行為とは「取り消すまでは一応有効であり、取り消しにより確定的に無効となる(はじめから生じていない)遡及効がある」ということになります。

※制限行為能力者:単独で有効に法律行為をすることができる能力が制限される者

この民法を的確に活用するためには、被害者本人に保護者を立てることが必要です。 その保護者のことを、成年後見人(以下後見人)、保佐人、補助人(本人の障害の程度により変わる)といいますが、ここでは障害の程度の重い後見人のお話をします。

まず抑えていただきたいことは、
保護される方(被害者本人)を被後見人、
保護者を後見人といいます。
被後見人の条件は
①精神上の障害により事理を弁識する能力(判断能力)を欠く常況にある者で、「プラス」
②家庭裁判所の後見開始の審判を受けた者とあります。

さて①に関してはお医者様の診断書や意見書が必要です。これはさほど難しい作業ではないでしょう。

問題は②です。
【審判の開始】
後見開始の審判の請求を家庭裁判所(地裁、高裁ではありません)にしなければなりません。また請求する権利を有しているのは、本人、配偶者、一定の親族、検察官と決められています。まちがっても裁判所のほうから審判を開始はしてくれません。ここでも被害者側家族の努力が必要になってきます。請求用紙は家庭裁判所に備え付けられています。 用意しなければならない書類は山ほどあります。 住民票等の類の行政書類はもとより、特筆すべきは鑑定費用です。後見人の場合、裁判所が指定する医師に鑑定してもらう必要があり、こちらの費用が大体10万円~20万円必要です。
【保護者(後見人)の選任】
さて申し立てを受け付けた裁判所は保護者(後見人)の選任をします。 一般的には関係者から推薦された方が後見人となられますが、裁判所はいろいろな事情を考慮して後見人を選定します。 知識として知っていておいていただきたいのは、後見人は一人ではなく複数でも可能です。また法人が後見人になることも出来ます。
【後見人の仕事】
後見人は代理権、取消権、追認権の権限を持つようになります。 それらを駆使し被害者の生活・療養看護と財産管理をしていくのです。 具体的な内容は多岐にわたりますが、被後見人(被害者本人)の中長期的な展望にたって最善の療養看護が出来るよう、代理権、取消権、追認権を行使し、被後見人を保護していくのです。 後見人になるということは並大抵のことではありません。ご家族でよく話し合い、十分な計画が必要です。また後見人は定期的に裁判所に対して定期的に収支の報告等をせねばならず、審判が下りたからといって、裁判所との関わりは終わりません。