特集「TV放送より」

実録「認められぬ後遺症」

2008年4月16日、首都圏のテレビ放送より

まず番組内容(約8分)をご覧ください。(windows media playerでご覧いただけます)
当会にはこの番組で紹介されている被害者と同じような境遇の方が何名もいらっしゃいます。 番組内で何度もとりあげられていますが、後遺障害は交通事故との因果関係を立証しなければ任意保険はもとより、自賠責すら支払われません。
紹介されている被害者のように仕事を失い、生活保護だけで生きていくということは、交通事故の被害にあった上に、さらに生活苦まで強いられるという2次、3次被害といえます。
この番組のように、特に頭部外傷の後遺症は要注意です。事故直後の急性期には気づかなかった後遺障害があらわれてくるケースが非常に多いのです。
したがって交通事故で後遺障害を負われた方は以下の点に注意しなければなりません。

記録の重要性

事故後の記録を刻銘に記録に残さねばなりません。警察の初動捜査内容はもとより、治療費や雑費などかかった経費の全ては領収書に残し、ファイルしておく必要があります。
また、日々の介護内容等を日記などに記録しておくことも必要です。その際には素人考えで編集せずに、あるがままを詳細に記録すべきです。そのときは不必要と思われた記録が後で重要になるということはよくあることです。なにはともあれ、記録を作成したら専門家と相談すべきです。当会のような団体でも結構ですし、弁護士らと相談するのもひとつの方法です。

損保会社とは

そもそも損害とは加害者が責任を取るのが原則ですが、交通事故の場合はそのほとんどは損保会社が担当します。損保会社は国民健康保険とは違い、営利企業です。ですから被害者の損害額を出来るだけ抑えようとしてきます。ですからきちっとした損害額を提示しなければ最終的には損保会社の言いなりという事件があとを絶ちません。しかし、損害額をきちっと請求することなど一般の民間人には到底出来ることではありません。弁護士らの専門家の意見を聞きながら感情的にならず、対応することが肝心です。

人を動かすとは

●弁護士
弁護士に事案を依頼したからもう安心と思うのは大間違いです。弁護士には被害の状況を事細かに伝える必要があります。これは被害者側の義務といっても過言ではありません。弁護士とのチームワークを大切にし、互いが協力し合いよりよい結果を目指すのです。
また、交通事故事案ほど弁護士により判決額に差がでるものはありません。交通事故に専門的な知識を有した弁護士に依頼しなければなりません。

●医者
お医者様の分野にも得手不得手があります。例えば交通事故による脳外傷の場合、急性期を担当する脳外科のお医者様(もしくは形成外科)と後遺障害を負った予後を看ていただけるリハビリのお医者様とでは意見書を書いていただくだけでも内容に違いがあります。間違ったことを書くお医者様はまずいないと思いますが(なかには後遺障害に興味を示さない方もいらっしゃいます)それぞれの専門化に適切な意見書を書いていただくには日々のコミュニケーションも大事です。被害者本人の受傷前の状態を的確にお医者様に伝え、きちんとした診断書を書いてもらいましょう。

●裁判官
いざ裁判となると、もはや相手は損保でも加害者でもなく裁判官です。彼らは原告と被告の言い分をきいて判決を出します。常に中立の立場である彼らに、被害者の損害を懇切丁寧に伝える作業は想像を絶するものですが、専門知識をもった弁護士とのコミュニケーションさえうまくいっておれば、裁判官にも損害内容の正当性が伝わるはずです。

終わりはありません

損害費目を立証し、悔いのない裁判が終わったからといって、これが最終地点ではありません。いつ終わるとも分からない介護の日々が始まります。得られた損害額は被害者本人のために前倒しで活用するぐらいの気持ちで介護に向かってください。一言で介護といいましても、介護される者より介護する者のほうが精神的に参ってしまうことが多々あります。そのため、裁判が終わったからといって安心してしまうのではなく、被害者同士が助け合い、知恵を出し合って相互研鑽していかねば介護に疲れきってしまいます。何事も礼儀が大事です。当会の主旨にもありますように、裁判を乗り切った被害者家族が、新たな被害者家族を支えていくには、会員らのボランティア精神が不可欠なのです。

最後に

被害者の後遺障害の度合いが重ければ重いほど被害者自身で損害を立証するなど到底不可能です。もちろん家族の助けが必要になりますが、被害者の元気なころと、後遺障害をおった今との格差をどう説明すべきかは非常に難しい作業です。なぜなら、お医者様も弁護士も被害者が元気なころを知っているはずが無いからです。「元気なころは気さくで明るい方だった」だけでは立証は無理です。極論ですが、入院当時は寝たきりだった被害者が歩けるようになっただけで、「完治した」と診断書を書くお医者様もいらっしゃいます。これはお医者様だけが悪いのではなく、元気なころと今との違いを十分に説明し切れなった被害者にも問題があるといわざるをえません。悲しいかな、損害を立証するのはお医者様でも加害者でもなく、被害者がしなければならないのが、今の日本の実情なのです。
当会では重度の後遺障害者、特に高次脳機能障害、重度脊髄損傷、遷延性意識障害等の後遺症の方々に、世間や福祉から差別されること無く、中流の生活が送れるよう支援をするのが主な目的です。100件の事故があれば100通りの様態があり、100通りの家族事情というものがあります。全く同じ被害者など存在しないのです。200名を超える当会の会員らは、それぞれの立場で筆舌には尽くしがたい苦難を乗り越えてきた方々ばかりです。また現在進行形で訴訟を戦っている会員も多くいらっしゃいます。彼らの経験や努力は机上の理論では計り知れない現場を乗り越えてきたものでしか分からない知恵があります。会員らは自らの意志で傍聴支援に参加したり、事件解決後も介護や保障事業等の相談を活発に行なっております。彼らの力をかりることは決して被害者にとって不利益になるものではありません。

また当会は20名を超える協力弁護士とも常に情報交換を行なっております。彼らは最新の画期的判例を携えて被害者の支援を行なっております。

重度の障害をおった被害者は決して孤立をしてはいけません。当会を含め全国にはたくさんの被害者支援団体があります。事情が合う団体があれば参加をし、被害を最小限にとどめる努力が必要です。