第2回勉強会レポート

2000年も師走の12月9日(土)、午前10:00から午後1:00、いつもの大会議室にて、北原浩一氏を講師に、又、数名の新しい方々も勉強会に加わり、第2回勉強会が催された。 北原氏の有意義且つ有益な講義の後、皆様方で自己紹介等も交え、真剣にして切実な話し合いがもたれ、今回はおよそ3時間にわたり、質疑を含め熱心なお話が続きました。

勉強会概要(第2回)

今日は、前回の第1回勉強会で時間不足で話せなかった私の事件や弁護士のお話などいたします。

具体的事例:例えば北原事件について

風邪は全快したら元通りになります。頭部(脳)外傷後遺障害は傷が回復しても元通りの身体にはなりませんから、退院して家へ帰れても「おめでとう」とはいえません。加害者は、事故当時事故責任が私の息子にもあると主張し、しかも任意保険には入っていないといいました。

私は警察は正義の味方だから事故真相につき被害者には何でも教えてくれるだろうと思っていましたが、現実には殆ど教えてくれないことを知りました。

職場で自分の専門分野のことについては少しは知っていて、社会のことも同じように知っているつもりでいたのに、息子の事故にあって何にも知らない世間知らずだったことを思い知りました。

弁護士について

親として手塩にかけて育てた子供の将来を楽しみにしていたのに、ある日突然に、無謀運転加害者に夢を断ち切られました。

最初に相談した弁護士は、障害1級は常時介護で、2級は随時介護だと説明し、また任意保険もなく支払能力もない上に事故責任を被害者に転嫁する加害者に対し厳しい処罰を求める上申書を、検事に届けてあげるといって預かっていながら、処罰が分かった後に聞いたところ届けないで握り潰してあり、騙し打ちにあいました。被害者の立場ではなく弁護士の立場から、波風を立てず検事の機嫌を損ねることを避けていたのでした。

後から分かったのですが介護料は3級でも5級でも取れるのです。

この弁護士には信頼が失われたから、今後の訴訟につき依頼することは出来ないと表明して断わりました。判例を徹底的に勉強し、目立つ判例を取った弁護士に依頼した時は3人目の弁護士でした。

加害者が任意保険がなかったので被害者として損害賠償を取ることが出来ないと心配しましたが、幸い自分の自動車保険がSAPだったので、この保険から加害者の払うべき保険金の支払いを受けました。皆さんも自動車保険はこのSAPにすることをお勧めします。これは難しい保険なので、法律しか知らない弁護士ではだめです。

交通事故白書によると

平成11年の事故24時間以内の死亡者数は9,006人で、普通はこれが警察庁発表死亡者として報道されます。事故30日以内の死亡者は10,372人ですが、厚生省の人口動態統計では13,176人です。また85万件の事故で105万人以上が負傷していますので一年間に国民100人につき一人の割合で怪我をしていることになり大問題です。
他人が起す事故に厳しい目を向けることは、必然的に自分も運転に気を付けることになるものです。

刑事裁判についての関わり方について

(OHP投影説明)で以下の項目につき説明がありましたが、話題の量が多いので、ここでは項目を並べる事でご容赦下さい
☆加害者に負わされる3つの責任がある(刑事責任・行政処分・民事責任)。
☆刑事処分の流れ(事故-警察の取り調べ-検察庁送致)。
☆検察での取り調べ(起訴・不起訴・略式起訴)。
☆起訴-裁判-判決(懲役・禁錮・罰金)。
☆不起訴-検察審査会。
☆重大交通事故被害者になった際に気を付けるべき重要事項。
☆自動車保険SAP。
☆角度を変え多くの写真を。
☆写真には車のナンバ-を。
☆重傷の場合は、最初から健康保険が便利。
☆目撃者を捜しメモを、警察依存はダメ。
☆関係書類、領収書、メモ等必ず保存、関係者にはコピーを渡すこと。
☆加害者、警察、損保会社の話など全てメモしておくこと。
☆現場のビデオを撮り、関係者の話は録音する。
☆真実を自力でつかむこと。他力依存は後悔のもと。

逸失利益について

大学卒の定年までの平均所得は日本生産性本部によると3億2千万円だそうです。

☆頭部外傷後遺障害1級から3級まではこの所得を得る能力を喪失したことになり、加害者は民法の規定により損害賠償すべきです。

これは毎月の給料の累積ですが、加害者(損保会社)側から前払いの一時金でこれを受取り給料相当の生活費を払い戻したとすると、利息がかさみますので不公平になるという考え方で、年五分の計算によるライプニッ係数を掛けた利息分を控除され、その結果は一億円前後になります。

しかし今は低金利時代ですから、この五分の控除は不公平なのです。

重度後遺障害者になれば介護料も必要になりますが、職業的介護人を頼むとすれば日額は1万円くらい或はそれ以上にはなりますから、計算法にもよりますが、生涯には介護料は1億円くらいにはなり、逸失利益を合わせると2億円くらいになります。慰謝料は最高で3,000万円くらいになります。アメリカでは懲罰的慰謝料10億円と言うのもあります。過失相殺は被害者に1割とか2割とか事故態様によりいろいろあります。

損保会社は保険の仕組みにより儲けているのだから、被害者が過失責任を控除した損害賠償額を満額受け取ることは当然の権利です。
損害賠償は、福祉のように国民の税金や福祉目的の保険に支えられていないのですから、福祉と異なり国民に負担をかけていないことになります。

将来、もし高次脳機能障害を治す治療法が出来たら、その高額の治療費が必要です。親が亡くなった時に遺された子供の面倒を見て貰うためにもお金は無限に必要です。そのためには損害賠償を裁判により取り戻しておかないと、交通事故に関係ない立場の国民に負担をかけることになります。

裁判で取り戻した損害賠償金は息子のお金であり親は預かっているだけです。勿論福祉による救済を受ける権利は誰にでもある訳です。
損保会社は慈善事業をしている訳ではなく儲けを出す立場ですから、プロとして上手に丁寧に親切に対応して被害者に「はんこを押させる」立場に立ちます。被害者の立場に立った場合は、正々堂々と損害額の全てを取り戻すべきです。

交通事故解決方法

三通りあると思います。それは、「泣き寝入り。」「やくざを使って相手を脅迫して主張を通す。」「日本の法律に従って正々堂々と損害を取り戻す。」です。損害賠償は正々堂々と取り戻せるものであり、取り戻すべきものでもあります。

裁判所について

裁判所は、民事裁判でも、当然正義の味方だと思っているでしょうけれども、そうではありません。当事者主義といって、当事者が主張したことだけを法律に照らして判断することになっています。ですから主張し立証ないと正しくても負けてしまいます。また自由心証主義ですから、当事者の主張が真実だという心証を与えないと判断して貰えません。

1級の後遺障害の介護料が日額3千円という弁護士は、よほどの無能か被害者救済の立場に立っていない弁護士というべきです。このような弁護士に頼むと、加害者に次ぎ、二次被害を被ることになります。

事例についての説明

私の息子の場合は、当時11才の小学生だったのに最高裁まで日本一の損害額を認めて貰いました。
その後私が支援した事故時20才の専門学校生は、遷延性意識障害者でしたが私の事件を上回る損害額を認めて貰いました。

経験から学んだことは、一審が一番大切です。

あわてないでじっくり準備する必要があります。証拠作成については、被害者意識で惨めな気持ちで作るのではなく、我が子の損害を取り戻すために命を賭ける聖戦だと思い、魂を込めて作る作品だという思いで作り、裁判をすることです。そうすることは裁判官の心を動かすことになるはずです。

裁判は時間がかかるという言葉があります。本当でしょうか。

時間が足りないと、相手の主張を打ち負かす証拠を揃える時間がなくなります。公害裁判などのように、10年とか20年かかり、提訴した被害者が判決を待てずに死亡してしまう場合はともかくとして、交通事故被害者の裁判は時間がかかるとはいえないと思います。

私の事件では、一審は八王子の地方裁判所でしたが提訴から1年6箇月でした。二審は東京高裁でしたが8箇月でした。三審は最高裁ですが5箇月でした。平成3年に提訴し、2年と9箇月で、最高裁まで勝訴で終りました。

裁判は公開されているので何時でも法廷で傍聴することが出来、体験を勧めます。
裁判を提訴する際に請求金額に応じた収入印紙を添付しますが、これが裁判費用といわれるものです。これは勝訴すると、判決に記載された分を相手から取り戻せます。(ほかに数例の事件につき説明されたが紙面の都合で省略致します)

示談とは、お互いに譲り合って、或は、わずかな金額で相手を許し解決することです。被害者の立場であるのに、相手を許す必要はありません!最も大事なことは、自分で事故の真実を解き明かすことです!

********** 出席者達の自己紹介 ************

北原氏の講演の後、出席者全員による自己紹介が行われましたが、各々の事故状況やその後の経過等、色々な有り様を伺う事が出来、又、時には加害者側の無責任で冷酷な仕打ちや、我が子を障害者にされた親としての無念さ等を伺い、皆当事者の家族ですから他人事ではないわけで、周りも涙する場面が多々あり、大変に有意義な話合いでした。 尚、個々につきましては、プライベートな事柄ですので、ニュースに記述することは控えさせて頂きます。

交通事故に遭われた方で自賠責救済を求める方、今実際に困っていて切実に勉強してみたいという方、北原氏のお話を聞いてみたい・皆さんと話し合ってみたいという方がおられましたら、大変有意義ですので、勉強会に是非御参加下さい。