交通事故自賠責等級認定

自賠責等級認定

損害賠償訴訟を戦っていくゆえで、自賠責等級認定がすべての基礎となります。ここで認定された等級が、裁判の結果のすべてを担うといっても過言ではありません。しかし、ほとんどの場合、正しい等級認定はできていないようです。

その理由はたった一つです。被害者側が正当な請求方法をしていないからです。それは自賠責の被害者請求です。保険には自賠責保険と任意保険があります。被害者の方々から良く聞くのは、「自賠責なんて大して補償してくれない」という言葉です。

自賠責の後遺障害別等級表を見ていただければわかるように(PDF)、必ずしも低額とは言えない補償がされていますし、何にも増して正当な自賠責後遺障害等級認定を獲得することが後の損害賠償に大きく響いてきます。

この自賠責等級認定で的確な等級を認定してもらうことが、最重要課題です。我々が、最重要課題と説明するための理由はもうひとつあります。後遺障害の自賠責等級認定をもらえれば、等級どおりの保険金が訴訟を始める前に手にすることができるということです。これを「被害者請求」といいます。

当会の被害者の方々も、まずは、正当な自賠責等級認定を受け、そして自賠責分の保険金を受け取り、経済的に安定した上で、民事裁判に挑んでいます。

被害者本人の後遺症が重ければ重いほど、裁判は長引きます。そのため、この自賠責保険を被害者請求により先に手にすることにより、被害者本人の介護費用や入院費用、裁判費用などを気にせず、訴訟にむかえるのです。これは大きな力となります。

被害者の家族にとって、介護費用や入院費用の捻出が何よりも苦痛です。また、 被害者が大黒柱であった場合、生活費の問題も出てきます。場合によっては任意保険会社の秤量攻めにあって目先の低額の示談を受け入れてしまうケースも聞きます。これを解消できるということは、精神的にも経済的にも被害者家族にとって安心できることなのです。

保険金支払い基準の矛盾

当会が勧める被害者請求とは、被害者の権利として保険契約書の約款にも書かれていることです。しかし大方の被害者はその約款など読むこともほとんどありません。

保険金の支払い金額には大まかに分けて3つの基準が存在します。
1:自賠責基準
2:保険会社基準
3:裁判所基準
以上の3つが存在します。
同じ損害でも、算出するところが変わるとその金額は大きく変わってきます。裁判所基準がもっとも高く、時には保険会社が提示した金額の5倍~10倍の金額で判決が出ることなど珍しいことではありません。

このように法治国家日本が三権分立のなかで、判決という命令で出される結果は、家族が努力をすればするほど報われるものです。そのためには先ず、正当な自賠責等級認定が欠かせません。

適切で正当な等級認定について

被害者本人が入院されている病院の担当医師は、医師の立場から、被害者の症状を鑑みて、症状固定をします。症状固定とは「これ以上治療してもおおきな改善が見られない時点」のことです。そして、担当医はその時残っている後遺障害を元に、被害者の後遺症の等級認定をしてくれます。

しかし、ここで注意しなければならないことがあります。特に被害者本人の意識が回復していて、多少なりとも体が改善されている場合は要注意です。なぜなら、担当医は被害者本人の事故前の状態(元気なころ)を知らないからです。

高次脳機能障害の場合は鬱になったり、怒りっぽくなったり、暴力的になったりします。しかし、被害者の元気なころを知らない医師は、それが被害者本人の元々の性格だと思ってしまいます。

極端な例ですが、事故当初意識不明で寝たきりの被害者が運び込まれたしましょう。この被害者が意識を回復し、数ヶ月の入院で、意識を回復し歩けるようになっただけで、医者は完治したと判断してしまします。介護してきた家族から言わせると、確かに意識が回復して動けるようになったけど、人格は変わってしまい、とても元気なころの本人とは思えない状態でも医師はそう判断します。かといって医師にその違いを説明しても、理解して貰えません。なぜなら医師は元気なころの被害者本人を知らないからです。

日常生活状況報告書

こういった実情を避けるために、必要なのが「日常生活状況報告書」の作成です。これは自賠責等級認定時に、担当医の書類と一緒の出す書類のひとつです。基本的には雛形となっており、家族の立場からみて、被害者本人の実情について質問事項に答えるものとなっております。

しかし、このとき雛形ばかりにとらわれてはいけません。ありのままに日常の被害者本人の状態を刻銘に報告するよう努めなければなりません。家族の立場からであれば、その数は雛形内には収まらないはずです。元気なころはできていたものができなくなった。

当然、書ききれない内容は別紙にして、できる限り報告しなければなりません。作成時に注意すべきことは、その書き方です。被害者本人のどこに後遺症が残っているので何ができないということをわかりやすく説明するよう心がけてください。具体的には「手に麻痺が残っているため、名前をうまく書くことができない」といった具合です。

その他必要な提出書類

特に高次脳機能障害の方、いわゆる脳に損傷を受けた被害者に多く言えることですが、入院先の担当医が自賠責認定の書類を書いてくれるからといって安心していてはいけません。

病状の説明はさておき、脳に損傷を受けた場合、人間のあらゆるところに損傷が見られます。

具体的な部位として、聴覚、味覚、臭覚、視覚、触覚という五感に障害を受けていたり、泌尿器に障害を受けていたりすることが多くあります。ですから、耳鼻咽喉科をはじめ眼科や泌尿器科等の診察も必要です。

介護に携わっている家族でさえ、診察してみて始めて、意外なところに障害が残っていたなんて話は日常茶飯事です。そして、このようにして集めた診断書はすべて担当医にみせ、担当医に正当な後遺障害診断書を書いてもらうのです。

非常に大変な作業ですが、当会の会員の方々は、皆さん経験してきています。等級認定は不服申し立てもできますが、できるだけ早い解決を望むのであれば、こういった労を惜しまないことです。都会の場合は大学病院などがあり、その院内ですべての診断をまかなうことが可能ですが、地方になると、部位ごとに病院を回ることになります。

しかし、これもすべて、愛すべき家族のためです。 もちろん、被害者本人のためが一番ですが、重い後遺症を負った場合、その介護に明け暮れる周りの家族も大変なのです。これらの苦労は必ず正当な自賠責等級認定となっ返ってくると思っています。